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ハーヴェイ『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』

ハーヴェイ『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』
ウィリアム・ハーヴェイ
『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』

図版出典:M0013867: Experiment to demonstrate valves in the veins, 1628 | Wellcome Collection

 ウィリアム・ハーヴェイ(1578-1657)による『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』(1628)は、収縮と拡張を繰り返して血液を全身に循環させる心臓の機能を説明している。この血液循環説は、長期間にわたる実験により証明された。

 ガレノス(129-216頃)は、膨大な著作のなかで血液の役割も説明した。その意見によれば、血液は肝臓で生成される。それは、静脈を通じて心臓の右側の区画に向かう。そして、心臓の内部を隔てる壁にある小さな孔を経由して左側の区画に移動する。

 そこでは、血液が肺から送られてきた空気と混ざり合う。このとき、生命を活動させるために必要な精気も発生する。その過程を経て、動脈を通じて血液は各器官に行き渡り消費される。このように、ガレノスは精気という概念も含めながら血液の流れを説明した。

 ハーヴェイは、1599年にイギリスを離れてイタリアのパドヴァ大学に留学した。ガレノスが残した著作は、この時代にも医学の権威による理論として受け入れられていた。しかし、パドヴァ大学の解剖学者たちは従来の学説とは異なる意見を相次いで発表していた。

 アンドレアス・ヴェサリウス(1514-1564)は、自らの手で人間を解剖して心臓の内部を隔てる壁に孔はないと報告した。レアルド・コロンボ(1516-1559)は、血液が肺を経由することで心臓の右側の区画から左側の区画に移動するという肺循環を説明した。

 ヒエロニムス・ファブリキウス(1537-1619)は、血液の流れを調整する静脈の弁の機能を研究していた。ハーヴェイは、1602年に医学博士の学位を取得する。そして、ファブリキウスからの教えを受け継いで心臓の機能を解明する仕事に取り組むようになる。

 イギリスに帰国すると、ハーヴェイは人間を含む多くの動物たちを解剖や実験の対象にすることができる環境を得た。1609年に聖バーソロミュー病院の内科医となり、1615年にロンドン王立内科医師会の外科講座であるラムリー講座の講師に就任したのである。

 その研究の成果は、1628年に出版された書籍にまとめられている。ハーヴェイは、血液の総量や速度を計算した。その結果として、それが短時間に生産も消費もできないことを示した。血管を結紮する実験により、血液が特定の方向に流れることも証明した。

 この書籍には、上腕を止血帯で縛る実験の図版が掲載された。静脈の膨らみを指で押すことで、弁が血液を一方向に流すという事実が簡潔に伝わる。さまざまな実験は、血液が心臓の左側の区画から全身をめぐり右側の区画に戻るという体循環の証明に繋げられた。

 心臓は、その拍動により血液を全身に循環させている。この血液循環説は、従来の学説の信奉者たちから批判された。しかし、新しい発見も次第に受け入れられていく。ハーヴェイの著作は少ないが、この書籍は医学の進展に重要な役割を果たしている。


図版資料
ウィリアム・ハーヴェイ『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』(1628)

図版出典
M0013867: Experiment to demonstrate valves in the veins, 1628 | Wellcome Collection

参考文献
ヴォルフガング・エッカルト『医学の歴史』今井道夫、石渡隆司[監訳]/東信堂/2014
ジョール・シャケルフォード『ウィリアム・ハーヴィ:血液はからだを循環する』梨本治男[訳]/大月書店/2008
スティーヴ・パーカー[監修]『医学の歴史大図鑑』酒井シヅ[日本語版監修]/河出書房新社/2017
ハーヴェイ『動物の心臓ならびに血液の運動に関する解剖学的研究』暉峻義等[訳]/岩波書店/1961
J.アンダーソン、E.バーンズ、E.シャクルトン『アートで見る医学の歴史』矢野真千子[訳]/河出書房新社/2012

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